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【日光建築特集】空間デザイナー厳選の日光名建築を巡る旅9選

【日光建築特集】空間デザイナー厳選の日光名建築を巡る旅9選

都心から約2時間で訪れることができる国際観光地・日光。そんな日光の建築といえば、日光東照宮に代表される世界遺産「日光の社寺」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろん「日光の社寺」も魅力の一つですが、古くから国際的な観光地として栄え、海外の文化を取り入れてきた日光には、和洋折衷、古き良き名建築がいくつも残っています。建築を専攻し、飲食店や宿泊施設を手掛ける空間デザイナーの視点から、日光の名建築の魅力をお届けします。

1.【JR日光駅】旅のはじまりは、クラシカルな大正浪漫漂う日光駅舎から。【設計:明石虎雄】

電車を降りたら、改札に向かう前に「貴賓室」の看板を探してみてください。明治32年、大正天皇ご静養のための御用邸が開かれた際、国鉄日光駅(現JR日光駅)にも「貴賓室」が開かれました。現在は中を見学することはできませんが、そこにはかつての大正天皇が滞在された重厚かつ繊細な貴賓室が残っています。 改札を出たら、そのまま駅を出るのではなく、石手の階段を登ってみてください。2階には漆喰で装飾された天井から吊りさがる、豪華で大きなシャンデリア。かつて一等旅客専用待合室として利用された空間が、今は多目的ホール「ホワイトルーム」として公開されています。 大正元年に改築された日本国内では希少な木造2階建てのネオ・ルネッサンス様式の駅舎。 “白い貴婦人”とも称されるその優美なたたずまいは、国際的な観光地の玄関口にふさわしい白亜の洋館です。日光駅舎は、2023年で竣工111周年を迎えました。

2.【日光金谷ホテル】現存する日本最古のリゾートホテル。【設計:久米権九郎他】

創業明治6年。アインシュタインやリンドバーグなど、名だたる著名人も訪れた日本を代表するクラシックホテルです。開業当時から進化を続け、150年を超える歴史が積み重なります。日光金谷ホテルは敷地内に全4館あり、客室も様々な種類があり、「同じ客室を探すのが難しい」とも言われるほど。そうした進化の過程における度重なる増改築で最も衝撃的なのが、2階建てから3階建てへの増築です。建築好きならどこか違和感を感じてしまう理由がこれかもしれません。なんと上への増築ではなく、地下を掘って下へ増築したのだとか。和洋折衷の空間が広がる館内には、玄関の回転扉をはじめ、神橋をモチーフにした赤い欄干、「日光東照宮」に由来する彫刻の数々など、こだわりが至る所に詰め込まれ、探索するのが楽しくて仕方ありません。 2023年には150周年を迎え、これまでの歴史をギュッと詰め込んだ特設サイトを開設しています。是非こちらも覗いてみてください。

3.【金谷ホテル歴史館】国際的観光地・日光の始まりの地へ。

日光金谷ホテルの創業の地は、大谷川を渡った先、いろは坂方面へ向かう途中の山の麓にあります。日光東照宮の楽人(雅楽を演奏する人)だった金谷善一郎が、自宅の一部を外国人のために貸し出したのが始まりです。その魅力はなんと言っても、自然に囲まれた門から玄関へ至るアプローチ。敷地の奥には山を抱え、山から流れる水路が敷地内を横切り、建物の下を抜けていきます。玄関には「金谷侍屋敷 SAMURAI HOUSE」と書かれた木製看板。内部は隠し扉があったり、刀を振り回せないように天井を低くしているなど、建築当時ならでは工夫が随所に見られます。現在は、金谷ホテル歴史館として一般公開されており、見学が可能です。

4.【明治の館】文明開化の音がする、気品溢れる洋館レストラン。

日光の名建築で昼食を楽しむなら、明治の館へ。日本に蓄音機を初めて紹介したアメリカの貿易商F.W.ホーンの別荘として建造された洋館レストランです。その特徴的な外観こそ、日光の匠の技の集大成。「乱れ石積み」と呼ばれる技法で、壁面全てに日光産の日光石を用いた意匠になっています。その土地ならではの素材を用い、その土地だからできる技術の組み合わせで、ここにしかない建築を生み出す。「日光らしさ」を体現する建築作品の一つなのではないでしょうか。

5.【日光田母沢御用邸記念公園】江戸・明治・大正、時を超える日本建築のタイムマシン

日光田母沢御用邸記念公園は、大正天皇が皇太子の時代に静養地として造営された御用邸が一般公開された公園です。個人的には、日光東照宮と並んで日光で必ず見て頂きたい建築の一つ。もちろん御用邸ですから、当時の選りすぐりの素材、最高の技術を組み合わせた最高峰の建築です。それだけではない最大の魅力は、増改築を重ね、江戸・明治・大正と時代を超えた建築が一つに融合したところ。総面積7,000㎡にもなる空間が一つの連なる屋根の下で一体化されています。内部空間では空間の役割に合わせて、素材から構造、プロポーションに至るまで全てが意図を持って綿密に組み立てられている様子が伺えます。細部のこだわりも探し出したらキリがないほど。格式によって変わる錺金物や当時のスイッチ。仕舞いには、こんな畳のへりの納まりを見つけてしまった時には、もう腰を抜かしてしまいますね。

6.【日光真光教会】そこはまるで異国。北関東教区内で最古の礼拝堂。【設計:ジェームズ・ガーディナー】

異国を感じさせる、ゴシック風の重厚な教会堂が実は日光にあります。鋭角な切妻屋根に、厚い控え壁、そして大きなステンドグラス。外壁は大谷川や稲荷川から採取された安山岩の乱石積みを、内部には地元産の板橋石を使用しています。日光という神仏習合の聖地にキリスト教を布教するにあたり、こうした地域の素材を用いて、教会建築の真髄を実現することに大きな意味があったことでしょう。ユニークなドアの飾りが特徴的な建具もぜひ見て頂きたいポイントです。

7.【古民家日光】当時の暮らしぶりを偲ばせる民家建築

御用邸通り、民家の並びにひっそりと佇む異空間ギャラリーがあります。当時の民家を改装して、現在は「古民家 日光」として公開中です。明治時代に建てられた約140年前の木造3階建ての建物は、正面からは3階建てに見えませんが、裏に回るとその全貌を覗けます。その昔は芸者さんの置き屋としても使われていたそう。細く奥に伸びる廊下はまるで映画のワンシーンを連想させます。

8.【イタリア大使館別荘記念公園】これぞ避暑地・日光。悠久の大自然を纏う別荘建築。【設計:アントニン・レーモンド】

明治から昭和初期にかけて、大使館別荘や外国人別荘が数多く建てられ、国際避暑地として賑わいをみせた奥日光・中禅寺湖畔。日光建築を見るならば、こちらのエリアも外せません。旧イタリア大使館別荘は記念公園整備され、現在は一般公開されています。内外装は地元の素材に拘った杉皮張りで、「市松模様」「網代模様」「矢羽模様」など、日本ならではの伝統柄を表現しています。広い縁側には大きな窓を全面に配置し、まるで湖面まで続いていくかのような空間構成。中禅寺湖を建築の一部として意識したピクチャレスクな思想が伺えます。玉石を動きのあるデザインにあしらった見事な暖炉と杉皮と対比も美しい。家具一つとっても当時の様子が垣間見えます。この椅子の違い、何かわかりますか?

9.【英国大使館別荘記念公園】旅の締めくくりは、アーネスト・サトウが愛したこの景色。

こちらも湖畔に佇む別荘建築。園内の建物は、英国の外交官アーネスト・サトウの個人別荘として明治29年(1896年)に建てられ、英国大使館別荘として長年使われてきた姿を復元したもの。その特徴はなんと言っても湖面に向かって贅沢に開く大きなファサード。2階からの眺望は絶景としか言いようがありません。白を基調として、余計な装飾はなく、シンプルにこの場所の価値を最大限に引き出した空間づくりが魅力的です。一方、湖に面しない場所には壁紙やカーテンに有名な英国のデザイナー、ウィリアム・モリスの柄を多数使用。世界が愛したこの景色と、この景色のための空間をぜひゆっくりと感じてみてください。

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【中宮祠交番】しっとりとまちに溶け込む隈建築【設計:隈研吾】
【中宮祠交番】しっとりとまちに溶け込む隈建築【設計:隈研吾】
日光に隈建築があるのをご存知でしょうか。隈研吾といえば、新国立競技場を手がけた日本を代表する建築家の一人です。栃木県内にも多数作品を残している中、その一つが実は日光にも。当時の記事によれば、瓦屋根の庇が一直線に続く、明治時代の湖畔の街並みを参考に、この場所に再びその景観を取り戻す第一歩として設計されたそう。主張はしすぎず、でも美しく。しっとりと佇むその姿もぜひご覧になってみてください。(交番のため、敷地内における撮影等はご遠慮願います。)

日光には名建築がまだまだ盛りだくさん!

いかがでしたでしょうか?日光名建築を巡りは、日光ならではの歴史や文化、当時の人々が感じ、創り上げてきた古き良き日光を体験するのに打ってつけのルートです。ぜひ日光の名建築を巡って、日光らしさを感じ取ってみてください!

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高橋広野|空間デザイナー
高橋広野|空間デザイナー
日光の門前町エリアを拠点に、全国を旅しながら空間デザインをしています。 ホテル/店舗の内装を中心にロゴ・グラフィック・写真・動画・印刷物・WEBSNSなどのあらゆるものをトータルでデザインしています。 旅をしながら仕事するデジタルノマド。日光に移住して4年目。 PICNIKKOcafe and picnic rental store 店主。

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